オカルト大学スピリチュアル学部

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【ギリシア神話】悲しい実力者ハデスのその後…

前回は冥界の神「ハデス」について、その生い立ちから結婚までを紹介しました。ハデスは、ゼウスやポセイドンとも遜色ない実力を持ちながらもやや不遇な運命をたどった神であり、恋にも奥手なためなかなか世を上手く渡っていけないもどかしさがありましたね。

(前回の記事はこちら↓です)

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そんなハデスですが、その後の人生はいい方向に行ったのでしょうか。また、現在の人々の生活につながるエピソードもあるので、合わせて紹介していこうと思います。

 

 

 

冥界に降りたペルセポネから「冬」ができた?!

前回、ハデスは豊穣の女神デルメルの娘であるペルセポネとの結婚を紹介しました。ゼウスは、冥界の果物であるザクロの実を食べた分だけ冥界に滞在することをペルセポネに命じます。ザクロの実を4つ食べたペルセポネは、ハデスとゼウスに半ば騙される形で1年のうち4か月を冥界で過ごすことになります。

 

ゼウスの陰謀に憤りを感じた豊穣の女神デルメルは、ペルセポネが地上にいない4か月の間、自分の役割を放棄しました。豊穣の女神であるデルメルの役割は、農作物を豊かに実らせること。

その結果、地上に「冬」ができ、「四季」ができたというのです。

 

また、ペルセポネが地上に帰ってくると春が訪れることから、ペルセポネは「春の女王」とも呼ばれるようになりました。

 

ハデスとペルセポネのその後

ゼウスの計らいによって結局ハデスと結婚したペルセポネでしたが、もちろんこんな形での結婚は本意ではなく、ハデスへの気持ちは全くありませんでした。ハデスは諦めず彼女に優しく接し続けますが、彼女は以前冷たいままです。

 

そんな愛の無い結婚生活に嫌気がさしたハデスは、森の精霊である「メンテ」と不倫をしてしまいます。ハデスに心を全く開かなかったくせに、ペルセポネはこれに激昂し、メンテを踏みつぶしてしまいます。踏みつぶされたメンテは草になり、実は後にこの草は「ミント」と呼ばれるようになったのです。

 

やっと素直になれたね、ペルセポネ

そんな出来事があり、ペルセポネはやっと自分の気持ちに気づきます。心の底では彼女はハデスを愛していたのです。これをきっかけに、2人は愛を確かめ合いペルセポネは本当に「冥界の女王」となり、ハデスとともに冥界に君臨し、彼の右腕として活躍しました。

 

その後ハデスは他の神々とは違い、愛人なども作らずに物語などでは仲の良い夫婦として描かれることが多いですね。

 

ハデスと関係のある神や人々

ハデスは、冥界の神としてその役割をまじめに全うする人物でありました。そのため、ゼウスやポセイドンなどのように豪快な逸話などはあまりありませんが、そんな彼の人間性をうかがわせるようなエピソードがいくつかあるので紹介します。

 

アクスレピウス

ゼウスの息子「遠矢の神」アポロンとその妻の女性との子供であるアクスレピウスは、医学の天才として名を馳せました。医学を極めた彼は、最終的に死者を蘇生することに成功しますが、もちろん冥界の神であるハデスはこれに抗議します。

 

死者を蘇生することで地上と冥界のバランスや秩序が乱れ、とても危険な世界になってしまうという意見をゼウスは聞き入れ、アスクレピウスはゼウスの武器「ケラウノス」で殺してしまいます。

 

死者を蘇生するのはやりすぎでしたが、それでも医学の発展に大きく貢献したアクスレピウスは、ゼウスによって称えられ「へびつかい座」という星座になりました。

偉業を称えて星座にする、って現代人の価値観からすればちょっと粋な感じがしていいですよね。

 

オルペウス

オルペウスは、ギリシア神話に登場する詩人です。父アポロンから貰いうけた竪琴の名手としても知られ、人間動物関係なくその琴の音色で魅了しました。

 

ある日、愛する妻エウリュディケを亡くした彼は妻を生き返らせるために自らの足で冥界に踏み込みます。冥界には門番的な役割を持つ「カローン」や番犬「ケルベロス」がいましたが、彼の演奏する琴の音色に聞き惚れてしまい、彼を見逃してしまいます。

 

ついに冥界の神ハデスの前までたどり着いたオルペウスは、妻を生き返らせてくれとハデスに懇願します。オルペウスの必死の懇願と琴の音色に心を動かされたハデスは、条件付きで妻エウリュディケを生き返らせることを許します。

 

その条件とは、「冥界を出るまでは振り返って妻の姿を見ないこと」でした。しかし、暗い冥界の道を2人で歩いていき、もうすぐで地上へつこうかというとき、オルペウスは後ろを振り向いてしまいます。するとエウリュディケはたちまち冥界に消えていきました。

 

トリカブト

これは人物や神ではないのですが、トリカブトという毒草もハデスとかかわりがあります。

 

ギリシア神話に登場する「ヘラクレス」という英雄がいるのですが、そのヘラクレスが冥界の番犬「ケルベロス」を生け捕りにしました。ヘラクレスは地上にケルベロスを連れ帰ったのですが、日光を受けてケルベロスが悶え苦しみだします。

 

その際にケルベロスが出した涎が大地の栄養と混ざり合わされ「トリカブト」が生まれたといわれています。

 

余談ですが「敵意」「復讐」「人が嫌い」などの花言葉を持つこの花は、後にケルベロスが冥界から連れてこられた地であるコルキスという国で暗殺を目的に使用されるなどしています。

 

慈悲深く真面目な神、ハデス

物語などでは「冥界の神」などというイメージから恐怖の神として描かれることが多いハデスのそのエピソードなどを見ていきました。しかしそのイメージとは裏腹に、ハデスは冥界を支配するものとしての職務を全うしたり、オルペウスに手を差し伸べたりと、真面目で慈悲深い神でした。

 

このハデスの兄弟がゼウスやポセイドンという、とても豪快な神だったので対象的なこのハデスの性格は見ていて非常に面白かったですね。

(ゼウスとポセイドンについて書いた記事はこちら↓)

 

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その真面目さ、奥手さから少々悲しい運命をたどったハデスでしたが、その後はペルセポネと普通に仲良く幸せな結婚生活を送ったようです。

SF作品などでハデスを見たことがある人も、少し印象が変わったのでは?

 

今度作品の中でハデスを見かけた時は、この記事を思い出してハデスの人生に思いを馳せてみてくださいね。