オカルト大学スピリチュアル学部

思考実験、オカルト、音楽、筋肉、そしてアイドル。

大学1年の冬、僕の心はダメになった

2015年の春、僕は高校を卒業して、晴れて大学生になった。

なんてことはない地元の地方国立大学だし、実家通いだし、生活が激変!なんてことはなかったが、それでも新しい生活に浮足立っていた。

 

通っていた塾にそのままバイトとして採用され、毎日スーツを着て今度は自分が先生になった。

学部のオリエンテーションで同じコースの友達もできた。イケてるグループの一員になった。

高校のころからの仲間と共に、憧れていた軽音サークルに入部した。僕はドラムを担当することになった。サークルで知り合った仲間と、バンドも組んだ。人気ロックバンドのコピーバンドだ。ドラムは同期の中で1番上手かった。

 

1年前期、そこそこに単位を取った。少しだけ落とした。

 

日々は派手ではないが小さく輝きながら過ぎていった。毎日が何かしらの新しく楽しいことで溢れていた。

 

 

少し調子に乗っていたし、そのころの自分は割と何でもできる気でいた。

高校生の自分は、人望もそれなりに厚かったし、体育祭の団長を務めたときは女の子にだって多少モテた。

大学生になり、自由を手に順風満帆に過ごしていた僕は、失敗なんか考えもしなかった。大げさに言えば、最強になったつもりでいた。

 

夏、サークルの合宿が行われた。

僕は、酒がそこそこに強かった。盛り上がった合宿1日目だったか2日目だったか、ゲームが始まり、僕は酒に弱かった仲間の代わりに酒を飲んでいた。自分の中ではそれがかっこよかった。周りも多分すげえって感じの目で見ていた。

 

病院のベッドで目が覚める。サークルの先輩が何人かそばにいた。

一瞬で僕は状況を理解した。と同時に、絶望した。僕はまだ未成年だった。

実態として大学生なんて未成年であっても構わず飲むし店側もいちいち年齢確認などしない。

幸い僕は大事に至らず、病院側も口外しなかった。

 

体調も戻り、合宿に復帰した。

先の件もあり、合宿中は禁酒になっていた。

先輩たちは、「気にするな」「無事でよかった」などと表面では優しかった。

最終日、1年生バンドは初披露のライブが行われた。1年生にしてはそこそこの演奏をした。先輩たちに褒められた。

 

合宿から帰ると、1年生同志はすっかり仲良くなり、それなりに遊んだ。

 

9月、同じサークルに彼女が出来た。

月に1回の部会は理由をつけて3か月顔を出せなかった。

 

それから2~3か月ぐらいは合宿の最悪な思い出も忘れ楽しく過ごした。

 

ちょっと失敗したけど、あのときまだ自分は調子に乗っていたんだと思う。

 

11月中頃、彼女と上手くいかなくなった。11月終わり、彼女はサークルを辞めた。

12月初め、意を決して彼女に別れを切り出した。気になる人ができたらしい。だが僕のこともまだ好きだと言ってくれた。

僕は彼女のことが好きだった。僕は「一旦距離を置こう。気持ちがはっきりするまで待ってるから」といったようなことを言った。彼女は泣いて謝った。

 

その年の瀬、サークルの仲間から伝え聞いた。彼女は浮気をしていた。複数人だった。

 

僕はまた絶望した。

 

それから1か月は、なんとか気丈に振る舞った記憶がある。

同期は慰めてくれたし、僕の味方でいてくれた。

  

僕はもう誰も信じることが出来なくなっていた。

合宿での失敗も気にせず声をかけてくれる先輩。一件以来優しく励ましてくれる同期。だれ一人、である。

 

ある日、バイトの帰り道、誰かに乱暴に名前を呼ばれた。僕は無視して歩いた。

あくる日も、その次の日も名前を呼ばれた。家までは5分とかからない道だったので、何日か我慢した。

 

ある日、性懲りもなく名前を呼ぶ声に苛立ち、後ろを振り向いた。そこには誰もいなかった。僕は、イヤフォンをしていた。

 

何かが自分の中で崩れた。涙が止まらなかった。立ち上がれなかった。そう多くない道行く人は多分僕を無視して歩いていた。

 

それからどうやって帰ったのかあまり覚えていない。

とにかくあの夜、僕の心はダメになってしまった。

 

両親にも内緒で病院に通う生活が始まった。何だかよくわからない病名をつけられた。薬も出された。実はただのビタミン剤だったのかもしれない。効果はあったようななかったような気がする。

テストは意地で受けた。思ったよりは単位が取れた。

SNSの裏アカウントを作った。しょうもない感情のはけ口として使った。

 

現実の僕は、3か月で一気に口数が減った。

前までの僕はいわゆる「陽キャラ」だったと思う。それがたった3か月で「陰キャラ」になった。授業に行き、誰とも話さず、授業が終わるとすぐに家に帰った。

バイトの徒歩5分の帰り道、足が上手く動かずに1時間かかることもあった。泣きながら友達に電話した。声の出し方すらもわからなくなりつつあった。スマートフォンを握る手も震えていた。電話しながら落としたスマートフォンを拾うこともできなかった。

 

 病院の担当医は、割と楽天的な人だった。その能天気さは、嫌いではなかった。

いつだったか、担当医は「彼女でも好きな人でもできれば、すんなり治っちゃうこともあるのよ」と言った。僕は聞き流した。

 

僕が大学2年生になった4月、1歳年上のある女性と知り合った。脈はあった。

容姿は美しかったが、結構な遊び人だった。僕は自分の人生捨てたような気持ちで、付き合った。

 

その女(ひと)は、思いのほかしっかりとしていた。僕の知らないお店に連れて行ってくれた。僕の知らない場所を教えてくれた。僕にない価値観をたくさんくれた。

 

そして何より、僕の存在を心から肯定してくれた。僕を尊敬してくれた。僕も、彼女を尊敬していた。

 

色々な場所に2人で訪れた。様々な思い出ができた。

喧嘩もした。セックスもした。とにかくいろんな経験を彼女と2人でした。

気づけば僕の名前を乱暴に呼ぶ声は聞こえなくなっていた。彼女と共に2年過ごし、僕は少しだけ強くなった。

 

そして彼女は大学を卒業した。彼女は僕の住む場所からは遠くの都会へ就職した。

 

遠距離恋愛は程なくして終わった。この恋の終わりに寂しさや悲しさはあったが、僕の心を一番支配していたのは、「感謝」だった。

別れのとき、うざったいぐらい彼女に感謝を伝えた。彼女に出会えて良かった、心からそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

運命とかいうこっぱずかしい言葉を使わせていただくと、今回の人生では彼女と結ばれる運命ではなかったようだ。これは、次回かそのまた次回には、なんとか彼女と結ばれる運命を手繰り寄せたい、と思う程度の、僕なんかには勿体無かった出会いの話。

 

こんな文章でのマスターベーションは初めてだ。特に快感はない。自己満足も甚だしいが、不思議と賢者タイムは訪れない。何かの間違いでこのブログが多少有名になっても、どうか彼女の耳にはこの話が届かないでくれ。そして、どうか僕以外の誰かと幸せになってくれ。