「5億年ボタン」一瞬で100万円稼ぐ方法
こんにちは。
今回は、一瞬で100万円を稼ぐ方法、その名も「5億年ボタン」について話していきたいと思います。
と言っても、現実にそんなおいしい話があるわけではもちろんなく、フィクションの世界の話です。
「なあんだ」とがっかりした方、この話なかなか面白いので、ブラウザバックはまだしないでください。
5億年ボタンとは
5億年ボタンとは、週刊SPA!で連載されていた菅原そうたさんの「みんなのトニオちゃん」という漫画作品の中に登場する話の通称です。正式なエピソード名は「アルバイト(BUTTON)」。
登場人物
このエピソードには、登場人物が3人登場します。
- トニオちゃん
スネ郎とジャイ太のクラスメイトで、スネ郎のパシリ。
- スネ郎
- ジャイ太
トニオちゃんとスネ郎のクラスメイトで、かなりのヤンキー。
内容
スネ郎がどこかに楽で時給のいいバイトを探していたところ、母親からお使いを頼まれます。
スネ郎はパシリのトニオちゃんをタクシー代わりにお使いに出かけたところ、店長をボコボコにしてバイトをクビになったというジャイ太と遭遇。
そこで2人は新しいバイト先を探そうという話に。
「1発でドカンと稼げるいいバイトないかなあ」というジャイ太に、トニオちゃんはこう言います。
一瞬で100万円稼げるバイトでちゅ。
ホントでちゅ。仕事内容もめっちゃくちゃ簡単♪
誰でもできまちゅよ~
まるで夢のような話すぎて、現実では考えられない内容のバイト。その概要はこうです。
バイトの内容は、用意されたボタンを一瞬押すだけ。
このボタンを押すと、感じないレベルで微弱電流が流れ、異空間にワープする。
その空間は何もない空間で、もちろん自分ひとり。
その空間で、5億年ただひたすら「生きていろ」という内容。
しかし、5億年が終わった瞬間、5億年間の記憶は全て削除され、時間も体も元の状態に戻る。
ボタンを押すと5億年間何もない空間でひとりぼーーっと過ごさなければいけないが、終わった瞬間全ての記憶が削除されるので、実際には一瞬で100万稼いでいる状態。というわけです。
この提案にジャイ太は即答で承諾。トニオちゃんは少し不気味に「…わかったでちゅ」と返事をし、「5億年ボタン」を差し出します。
意を決してジャイ太はボタンを押します。
漫画では、一旦5億年の記憶部分はカットされ、100万円をジャイ太がいきなり受け取っています。
もちろんジャイ太は何の記憶もないので、一瞬で100万稼いだ状態に興奮。ジャイ太は続けざまにもう一度ボタンを押し、200万円を手に入れます。
それを見たスネ郎は「俺にもやらせてくれ」と志願。
スネ郎の5億年が漫画で描かれます。
5億年の世界にワープしてきたスネ郎。最初のうちは空間をうろうろしたり、出口を探してみたりするものの、3日たって「出口などない」という簡単な結論に至ります。
ここで初めてスネ郎は事態の重さに気が付きます。最初の一週間は友達や家族のことを考えながら過ごしました。
3か月後。この空間がものすごく長期なものということにようやく気づき始める。
半年後、この場所で前向きに生きようと努力した結果、「ひとりじゃんけん」等様々なひとり遊びをを考案。
1年後。行きついたのは妄想ワールド。
そして40年後。
スネ郎は何もしなくなる。
100年後。あと499999900年。がんばれスネ郎。
12066年後。スネ郎はもはや考えるのをやめた。
そして504万9272年目のある日。突然スネ郎の頭に哲学的な疑問が走ります。
「本当はこっちが現実なんじゃないのか?」
一体ここはどこなのか?俺は前いた場所になぜ戻りたいのだ?宇宙とは?俺という生物の存在とは何なんだ?
スネ郎はまた考えました。ペンの代わりに抜いた派を使い、休むことなく考えました。10年、100年、1万年…幸いにも、彼には考える時間は山ほどありました。
真理を追究すべく、何度も何度も間違い、そのたびさらに精密な形を生み出していきます。
1億2316万9649年。彼は宇宙を理解し、何かを悟ります。
そして残りの3億7683万351年間、彼は空間と調和し過ごします。
そして5億年目。
彼は元いた世界に還されます。そう、記憶を消されて。
そこには100万円を手にした自分。本当に5億年間の記憶はありません。
「一瞬で100万!やめらんねー!」
「何回やってもいいの?」
「じゃ♪連打しちゃおっかなーッ」
…5億年、16往復コース、開始。
といった展開で、エピソードは終了します。
考察
この話は、ショートショートや思考実験好きの人には結構有名な話で、なかなか面白い議論が盛んにおこなわれています。
五億年ボタン押す奴ってこのコピペ読んでも押すの? | 不思議.net
この問題は記憶の連続性、といった観点から議論されることが多いようですね。
記憶を完全に消され、後遺症もないならその5億年を過ごした人物は自分とは違う人物である、と考える人も少なくないようです。面白い意見を見つけたので引用させてもらうと、
人間がもしも内蔵を移植しないといけなくなった時、「臓器提供クローン人間」から臓器を抜き取り、移植する。
提供したクローン人間はそのまま殺されます。左を五億年を過ごす自分、右を百万円をもらう自分、に置き換えると・・・ あら不思議。
まったく同じ話だとわかります。
なるほど。クローン問題と同じと考えることもできるのか。
たしかに、5億年間の記憶はないのだから、5億年を過ごす自分は自分のクローンと考えれば、ボタンを押せるという考えも頷けますね。
この問題の本質は、5億年とか100万円とかいうのはもちろん関係なくて、僕は「5億年間を過ごす自分は自分なのか」ということだと思います。
だって記憶も何もないのですからね。要は「5億年を過ごす自分のクローンに対しての思いやりがあるのか」という考えに収束するような気がしますね。
これはクローン問題でも同じ。臓器提供などを目的に作られたクローン人間にも、自我や生後の記憶があります。そのクローン人間に、人権はあるのでしょうか。
考えさせられますね。
あなたはどうでしょうか。一瞬で100万円、ボタンを押すことはできますか?