オカルト大学スピリチュアル学部

思考実験、オカルト、音楽、筋肉、そしてアイドル。

欅坂46「黒い羊」を読み解きたかった

1月31日、欅坂46の8thシングルである「黒い羊」のMVが公開されました。

遅くなりましたが今回はそのMV及び歌詞の考察をしていけたらなと思います。

考察記事はもうたくさん出ていると思いますが、敢えて全く読んでおりません。

今から書くことは、あくまでも個人的な見解です。ちょっと長めです。

 

 

まず、タイトルの「黒い羊」

これは、英語の「Black sheep」というスラングというか慣用句から来ているのでしょう。「のけ者」といったような意味です。確か心理学にも黒い羊効果といったものがあったと思います。

今までの欅坂の楽曲は、社会に反抗するような歌詞が多かったのですが、どう展開していくのでしょうか。

 

 

まずMVは殺人だか自殺だかの現場とそれに群がるマスコミや野次馬?の様子から始まります。周りには赤い花びらが散っています。

そして、それを少し離れた場所で見ている平手。手には彼岸花。そんな現場をよそに歩き出す平手。

0:26、勉強机に座り父親らしき人に何かを言われている様子の誰か。嫌になったのか教科書を放り出します。母親らしき人は必死に教科書を拾う。

0:33、男性を突き飛ばす齋藤。また、突き飛ばした後には手に持っている缶を投げつけています。その後ろでは男性2人が殴り合っている。

その直後、警官に取り押さえられる佐藤。化粧品のようなものが数点置いてある取り調べの机に座らされます。

 

まず死んだのは誰なのでしょうか。平手が彼岸花を持っていることもかなり気になります。彼岸花といえば、死を連想する花。このことから、平手自身はこの物語の中ですでに死んでいるのかと考えることもできそうです。

信号は青なのか?それとも緑なのか? どっちなんだ?
あやふやなものは はっきりさせたい
夕暮れ時の商店街の雑踏を通り抜けるのが面倒で
踏切を渡って遠回りして帰る

次に歌詞。この部分はまだ導入部分ですが、「青信号」と皆が当たり前に言っていることに対して疑問を持っていること。商店街の喧騒を嫌いわざわざ遠回りして帰ること。主人公である「僕」はやはり世間を信用していないようです。

 

0:43、鈴本が座ってテレビを見ている隣で、スーツ姿の女性に怒られ頭を抱える織田。

0:48、男性に何やら怒鳴られている守屋。その後ろには取っ組み合いをする男性2人。

0:53、女子生徒2人に突き飛ばされる制服を着た小林。プリントをばらまかれます。

 

鈴本は雰囲気的に引きこもりの少女のようです。織田はおそらく社会人で、会社の人間関係がうまくいっていないように見えました。守屋はちょっと想像になりますが、男性は親のように見えました。小林は女子生徒にいじめられているのですが、これまた個人的な想像ですが、漫画家志望の女の子が漫画の原稿をばらまかれたのかなと。

放課後の教室は苦手だ
その場にいるだけで分かり合てるようで
話し合いにならないし 白けてしまった 僕は無口になる
言いたいこと言い合って
解決しようなんて楽天的すぎるよ

放課後の教室、その場にいるだけで仲の良い友達になっている気になりますが、「僕」はそう感じてはいないのか。嫌気がさした「僕」は口を閉ざし、言いたいことも言いたいことも言えなくなる。

 

0:55、大人3人に囲まれ頭を抱える石森。机には書類や電卓。

1:02、スマホを見て不気味に笑う小池、その後天を仰ぎ力なく歩く。

1:05、おじいさんが病院のベッドでどうやら亡くなったよう。そばで涙を流す菅井。そしてその横に彼岸花を持った平手。

 

石森もおそらく社会人で、仕事がうまくいっていない。石森の場合は、人間関係よりも、仕事そのものがうまくいっていないと感じました。小池は、自身のブログでも「自分を責めて追い込んでしまって、SNSで届いた暗い内容の通知に人生をあきらめてしまった役」と語っていました。病院のベッドで亡くなっていたのは菅井の祖父でしょう。

誰かがため息をついた
そうそれが本当の声だろう

教室では誰もが本心を話していなかった。ふと誰かが呆れてついたため息こそ、皆の本心を一番表していたのでしょう。 

 

1:10、平手が菅井に歩み寄るが菅井は平手を突き飛ばす。

1:13、佐藤を平手が抱きしめるが、平手は突き飛ばされる。

1:17、平手が小林をいじめている女子生徒2人を突き飛ばし、小林は彼岸花を奪う。平手は小林を抱きしめる。

1:31、平手は男2人に絡まれる渡邊を助けるも、拒まれる。

1:39、石森は平手を拒まず受け入れる。

1:44、手首を見つめ泣いている小池を平手が抱きしめる。

 

平手はメンバー一人一人を抱きしめるが、菅井、佐藤、渡邊には突き飛ばされてしまいます。その中で、小林、石森、小池は平手を受け入れます。前者の3人は、人生に絶望し、平手を受け入れる気になれなかった一方で、後者の3人は、いじめや自殺未遂など、周りに理解者がいないことで悩んでいたようなので、平手を受け入れたのでしょうか。

黒い羊 そうだ僕だけがいなくなればいいんだ
そうすれば 止まってた針は また動きだすんだろう
全員が納得するそんな答えなんかあるものか
反対が 僕だけならいっそ無視すればいいんだ
みんなから説得される方が居心地悪くなる
目配せしてる仲間には 僕は厄介者でしかない

サビの歌詞です。「僕」は自身がのけ者、つまり「黒い羊」であることを自覚していますが、今までの社会に対する反抗的な楽曲とは裏腹に、「僕だけがいなくなればいい」と歌っています。いままでだったら「こんな世界は間違っている」と歌った気がします。「僕がいなくなれば全て丸く収まるんだろ?」この曲に込められているのは、そんな捻くれた絶望だと思います。

 

真っ白な群れに悪目立ちしてる
自分だけが真っ黒の羊
どういったって同じ色に染まりたくないんだ

「僕」は自分を殺して周りに溶け込むより、あくまでも「いなくなる」ことで人生を諦めようとしているようです。「不協和音」「エキセントリック」に見られた強い意志はこの曲にはなく、この曲の「僕」はとても弱く儚い。

 

1:54、階段を何かの紙を持ってゆっくりと歩く長濱、その脇を転げ落ちる男性。また、階段には何人かの序列が出来ていて最上段の男性は腕を組みふんぞり返っている。

平手が階段を上ると、その上の階では幸せそうにケーキのろうそくの火を消す家族。平手と同じ服装をしたショートカットの少女。しかしその後ろには思いつめた表情の男女2人。その前には幸せそうな家族の写真がいくつも。

 

長濱は社会人。長濱の横を転げ落ちる男は、仕事がうまくいかず落ちこぼれていった同僚か。そしてそんな同僚を横目に彼女が持っているのはおそらく辞表。ゆっくりと階段を降り、彼女も仕事を辞めるのか。

また、女の子は平手と同じ服装をしていることから、幼少の平手か。そしていくつも並んだ写真には、幼い平手と共に母はしっかりと映っているものの、父は写真から見切れています。その写真を見て少し悲しい顔をする平手。

死んだのは、父なのでしょうか。それとも離婚による家族の崩壊か。「写真に写っていない」ということから、父が死んでいると考えるのが僕はしっくりきます。

薄暗い部屋の灯りを点けるタイミングって いったい いつなんだろう?
スマホには愛のない過去だけが残ってる

人間関係の答え合わせなんか僕にはできないし

そこにいなければ よかったと後悔する

 時間の経過とともにだんだんと暗くなる。これはおそらく、「僕」は以前から「黒い羊」であり、時間と共に周りとの関係も暗くなっていることの比喩でしょう。ここでもこの状況を打破しようともがくことはせず、「僕」は諦めています。

人生の大半は思うようには行かない
納得できない事ばかりだし
諦めろと諭されてたけど
それならやっぱ納得なんかしないまま その度に何度も唾を吐いて
噛みついちゃいけませんか?

ここで初めて「僕」は悔しさを垣間見せ、納得できずに「噛みついちゃいけませんか?」と問います。

2:34、平手は何か自分に向けて怒鳴っている大人たちの中を頭を抱えながら歩く。

NO NO NO NO

全部僕のせいだ

「否、全部僕のせいだ」。結局すべてを諦め、ひとりで背負い込む「僕」。

 

2:41、そこを抜けると、 平手は彼岸花を手放し走る。その先には他のメンバー。平手はメンバーを抱きしめては突き飛ばされ、を繰り返し、何かを追いかけるように走ろうとするも、小池と佐藤に制される。その間に他のメンバーは平手が向かおうとした方向に走り出す。足元には彼岸花の花びら。途中、小林が転倒し、平手は手を差し伸べて送り出す。平手もゆっくりと歩き出す。

 

 ここで、またメンバーと平手は再会しますが、先ほどは受け入れてくれた石森や小池にも今度は突き飛ばされてしまいます。そして、平手が追いかけようとしたのはおそらくその石森と小池。平手の心は届かず、彼岸花は走り去る足元に散っています。

黒い羊 そうだ僕だけがいなくなればいいんだ
そうすれば 止まってた針は また動きだすんだろう
全員が納得するそんな答えなんかあるものか
反対が 僕だけならいっそ無視すればいいんだ
みんなから説得される方が居心地悪くなる
目配せしてる仲間には 僕は厄介者でしかない

わかってるよ

1番サビと同じ歌詞ですが、最後にひとこと「わかってるよ」。それもかなり絞り出すような声で。自分はのけ者だということも、そしてそれが全部自分のせいだということも。

 

平手は光の差す階段を上る。その先には先ほどの幼いころの平手が彼岸花を持って立っている。平手はそれを抱きしめまた階段を上る。

上った先、屋上には、メンバーが。それを見て何かを叫ぶ平手。

今度は、みんなに受け入れられているように見える。

 

幼い日の自分に、彼岸花を手渡される平手。やはり平手は死んでいるのだろうか。しかし彼岸花には「転生、再開」といった花言葉もあるようです。平手家が離婚による一家離散であるならば、家族関係が「再開」するという解釈もできます。ここでは一転して平手は皆から受け入れられているようにも見えますが、見方を変えると「なれ合い」をしているようにも見えます。

 白い羊 なんて僕は絶対になりたくないんだ
そうなった瞬間に 僕は僕じゃなくなってしまうよ
周りと違うそのことで 誰かに迷惑かけたか?
髪の毛を染めろという大人は何が気に入らない?
反逆の象徴になるとでも思っているのか?
自分の色とは違う それだけで厄介者か?  Oh…

ここで、曲はこれまでの暗い雰囲気と一変し、天国のような場所を想起させる綺麗なコーラスで展開していきます。そしてラスサビへ。一見、白い羊の中に「僕」が仲間入りできたようにも見えますが、それではいけないと。自分を殺してまで溶け込みたくない。と「僕」は言っています。「迷惑をかけていないのに、厄介者扱いか。」と、やはり最後も諦め。

自らの真実を捨て
白い羊のふりをする者よ
黒い羊を見つけ 指をさして笑うのか?
それなら僕はいつだって
それでも僕はいつだって
ここで悪目立ちしてよう

そして最後はこの曲を聞いている「白い羊のふりをする者」たちに問いかけるような歌詞。自らを殺して黒い羊を指さし笑うのなら、自分はいつまでもここで笑われ続けてやろうじゃないか。そんな、意地になったような「僕」の気持ちが伺えます。合わせるつもりはないと。

 

他のメンバーはまた走り出し、平手はまた一人になる。何かを訴えるようにのたうち回り、他の人は少し離れた場所で立ち尽くし見守る。

何かを叫びながら逆の方向へ歩き出す平手、後ろを歩く他のメンバーたちは次第にぼやけていくが、ゆっくりと同じ方向に歩いている。

彼岸花を抱きしめ座り込む平手。とここでMVは終了。

 

最後は平手の後ろに映る皆がだんだんとぼやけていくことから、個人的にはやはり平手がこの世を諦めた(=死んでいる)のではないかと思わせられました。しかし、皆は最後、確実に平手と同じ方向に進んでいる。この物語に救いを求めるなら、命を落としてまで訴えた平手の叫びは、少しは届いていたのでしょう。世界は、少しずつ変わっていきます。

 

 

 

 

最後に

この曲は細かい描写や色々な解釈が出来る部分が多すぎてなかなか読み解けませんでした。僕も色々な方の考察をこれから見ていこうと思います。

 

この曲は、曲構成などもとても面白いので、そういった面でも考えてみたいなと思いました。気が向けば。

 

では。